今日の一冊 『濱地健三郎の霊(くしび)なる事件簿(初版2017年発行)

日曜夜にこんばんは

本好きVtuber(近日デビュー予定)本多よむがお勧め本を紹介する『本多よむの異界図書館』のお時間です

 

九月も第二週が過ぎましたが、日本各地が雨にたたられた一週間でしたね

皆様がお住まいの地域はご無事だったでしょうか

秋雨前線には、程々の活躍にとどめてほしいものです

そうでないと、雨降りを理由にのんびり読書を決め込むわけにいきませんから

 

雨でなくても、読書の秋

九月のお勧め本テーマは、『この名探偵を推したい』

名探偵と言えばミステリー、推理小説のはずですが、今回はそこにオカルト、怪談が入ります

そんな作品はこちら

『濱地健三郎の霊なる事件簿』

主人公は霊能力がある探偵です

こうした主人公の場合、オカルト系ミステリージャンルの中で『ゴーストハンター』などと称され、霊を排除して事件を解決することが多いように思いますが、この作品は少々趣が異なります

作者の有栖川有栖さんが『ミステリの発想を怪談に移植した上で、両者の境界線に置いて新鮮な面白さを探すこと』(あとがきより)を目指しただけあり、主人公の特殊能力だけではほとんどの事件は解決しません

それならば余人の考えも及ばぬ名推理が披露されるかと言えば、そうでもなく

どんな物語かと言いますと

bookwalker.jp

あらすじ:

JR新宿駅からほど近いが高層ビルとは無縁の一角、古びたビルの二階に濱地(はまじ)探偵事務所はある

一切の広告を出さない濱地探偵事務所には、だが人づてに噂を聞き、普通の探偵も警察も頼れない人々が次々とやってくる

一見すると、探偵と助手一人のあまり流行らない探偵事務所だが、ここは国内唯一と称する『心霊探偵事務所』なのだ

急に気鬱に陥った小説家の夫の背後に、恨めし気な顔の女の霊を見てしまった妻が、事態の解決を願う依頼

殺害された娘の犯人捜しをと依頼された濱地と、壁に黒い穴の幻覚を見る男の接点は

妻が同性の恋人と駆け落ちした後、精神を病んで自殺した画家の家で、肝試しした人々が次々倒れた気味の悪い家とは

濱地の助手に持ち込まれた、突然顔を合わせることも出来なくなった恋人たちの悩みは、何が原因だったのか

殺人事件現場近くで目撃された容疑者が、遠く離れた自宅近くの喫茶店にいたアリバイは事実か否か

地方の名家で、子供が怪しげな影を見るようになった。その解決に呼ばれた濱地が見付けたのは、確かに存在する霊と……

 

霊を見る能力に長け、相手によっては話も出来る濱地ですが、霊の方は必ずしも自分の無念を伝える術を持っているとは限りません

つまり、霊から『犯人はこいつ』や『こんな理由で恨んでいる』とは教えてもらえないのです

そのため、濱地は元漫画家志望の助手志摩ユリエの描く似顔絵を基に、見えた霊の素性を突き止めたり、何事か起きたかを調べ、推理したりと地道な調査に勤しみます

そこでは、せっかくの霊能力だけに頼ることも出来ず、集めた情報から導かれる推理も超能力ではないので、いきなり犯人を当てることはできません

稀に見ただけで犯人が分かることもあるのですが、そこから警察に逮捕してもらうためには、調査や推理、駆け引きに勤しんだりせねばなりません

まさにミステリーと怪談がいい具合に混じりあい、通常のミステリやゴーストハンター探偵ものでは味わえない、新たな楽しさを味わえます

 

怪談とは言っても、一般的なミステリ作品からかけ離れたグロテスクな表現はなく、怖いものは好かないという方でも安心して読めることでしょう

濱地とユリエの軽妙な会話も相まって、すいすい読める作品ばかりの短編集です

興味を持っていただければこれ幸い🐉